<金口木舌>65歳現役社会


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 40歳を過ぎてそろそろ「第二の人生」が気になってきた。周りを見れば、ある知り合いは定年後、アトリエを開いた。ボランティア活動に精を出す人もおり、その道はさまざま。高齢化社会の中、定年後の人生も長くなっている

▼この4月から60歳以後の過ごし方が大きく変わる。厚生年金報酬部分の受給開始年齢が段階的に引き上げられることに伴い、希望者全員の65歳までの雇用確保が原則、企業に義務付けられる。「65歳現役社会」の始まりだ
▼60歳を超えても意欲のある人は多い。ベテランの持つ経験や技術は企業の財産でもあり、若い人にとっては学ぶことがたくさんあるはずだ。知恵と工夫次第で、企業に新たな活力が生まれそうだ
▼年金受給までの空白期間を避けるための措置だが、継続雇用の形態によっては賃金がそれまでより落ち込む可能性もある。現役期間は長くなるが、それぞれが描く生活設計に影響しそうだ
▼一方で、企業の人件費増に伴って新卒採用の抑制や50代以下の人件費カットを懸念する声もある。そうなれば世代間対立といった大きな弊害をもたらす。労働者や企業に年金行政失敗のツケだけを回されてはたまらない
▼将来は70歳、80歳定年も現実になるかもしれない。雇用と年金が変わる中、それぞれの世代が、その力を十分に発揮できるような社会の在り方を考えたい。