<金口木舌>若さを武器に


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 「ミスター」と言えば、この人の代名詞にまでなった長嶋茂雄氏。まな弟子の松井秀喜氏と共に国民栄誉賞が確実になった。輝かしい活躍は記憶と記録に刻まれている

▼ミスターがプロとして一歩を踏みだしたのが55年前のきょう。鳴り物入りで巨人に入団した大物新人の初戦に観客は沸いた。ところが、後に400勝投手となる国鉄の金田正一氏の剛腕の前に、4打席連続の空振り三振で終わってしまう
▼厳しいプロの洗礼を受け、長嶋氏は「悔しさと恥ずかしさがこみ上げて」その夜は眠れずに何度も跳び起きて素振りを繰り返した(著書「野球は人生そのものだ」)
▼だが、豪快なフルスイングを見た金田氏は「打ち取りながら怖かった。とんでもない新人や」と非凡の才能を見抜いていた。2カ月間低迷を続けた長嶋氏は人一倍の練習を重ね、その年の打点王と本塁打王、新人王に輝く
▼球史に残る鮮烈デビューにちなみ、4月5日は新人にエールを送る「デビューの日」とされる。今週、社会人として歩きだした新人にとっては、緊張感がやっと緩む週末かもしれない
▼長嶋氏は「僕のスタートはいつも逆境」「失敗があるからこそ失敗をバネに必死にくらいついていけるのだ」と書く。多少の失敗など恐れず、積極果敢な気概と新鮮な感覚で、それぞれの職場に新風を吹かせてほしい。若さは武器なのだから。