<金口木舌>安田発のエコツーリズム


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 「進路で迷っていたが医学部一本に絞ることになりました」「沖縄の自然は住民が守ってきたんですね」。神奈川県の高校生から国頭村安田区にそんな声が届いている

 ▼高校生たちは修学旅行の一環で、安田区でのエコツーリズムに参加した。丸1日かけて伊部岳や海岸で環境学習をした。他の事業者の企画と違うのは、森や海にとどまらず、住民に話を聞く時間が多く取られていることだ
 ▼進路に迷う高校生の背中を押したのは、石垣市長を務め、現在安田診療所で辺地医療を実践する大浜長照さん。神山坦治区長は伊部岳の米軍実弾演習を阻止した住民の運動を紹介した
 ▼講話は1時間の予定が、高校生の質問で2時間になったという。働く意義や自然を守ることの難しさ、基地問題。地域に根を張って暮らす人々の話は高校生にとって大きな刺激になっただろう
 ▼高校生たちは、やんばるの森や海に触れただけでなく、過疎地の悩みや自然に囲まれて暮らす喜びなど多くのことを知る機会になった。医学部を目指す高校生が将来、辺地医療に携わる人材に成長することを期待したい
 ▼「沖縄に来たから成長できた」。そんな感想が高校生から届く日も近いのでは。自然保護や環境学習にとどまらず、人を軸とするエコツーリズム。沖縄本島の北の端、小さな集落の取り組みは、沖縄観光の新しい形を示しているようだ。