<金口木舌>猫、ウチナーグチで一暴れ


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 夏目漱石の名作のウチナーグチ訳に挑んできた宜志政信さんから、「我んねー猫どぅやる」の完結版が届いた。原作本「我輩は猫である」の前半を訳した前作同様、ウチナーグチの楽しさ満載だ

▼「原作本と読み比べてほしい」という宜志さんの勧めもあって、2冊の「猫」を並べ、同時にページをめくった。熟語、四字熟語をはじめ意訳が抜群に面白い。ここは「いっぺーうむっさん」というべきか
▼例を挙げれば「右往左往」は「あまはいくまはい」、「起居」は「にんたいうきたい」という具合。特有のリズムも相まってウチナーンチュの感覚をくすぐる。「ぼんやり」は「ぬるんとぅるん」ときた
▼漱石に代わってウチナーグチで猫を操った宜志さんは「共通語は論理的だが、ウチナーグチでしか伝わらないことがある」と力説する。原作本の魅力である文明批評も、ウチナー風にひねりを効かせた
▼ここからは想像だが、宜志さんの本から猫を招いて日米両政府の「米軍施設返還・統合計画」を評してもらったとする。おそらく県内移設条件を幾度も煮込んだ「たじらしけーさー」と看破するのではないか
▼「主権回復の日」も、余計な「うゎーばぐとぅ」だと切ってくれたら痛快この上なし。この猫、ウチナーグチを駆使して今の沖縄で一暴れしてもらいたい。「したいひゃー」の喝采が上がるはずだ。