<金口木舌> 笑顔咲くオープンガーデン


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 南城市で整備工場を営む潮平隆さんは、かつて仕事人間だった。22年前に訪れたカナダで人生観が変わった。出会った県系人は日本人の半分の収入なのに、緑あふれる広い庭付きの家で悠々の暮らし。「本当の豊かさって何」と自問した

 ▼帰国後、見向きもしなかった庭造りにのめり込んでいく。2010年、合併した同市の初代観光協会長に就いて、まず手掛けたのがオープンガーデンだった。「花を見て喜ばない人はいない」
 ▼その年に始まった南城のオープンガーデンは今年7回目。14日まで開催中だ。春と秋の年2回、丹精込めたよそさまの庭に遠慮なくお邪魔できることが受けて、来場者は年々増え、前回は延べ1万5千人
 ▼300円のパスポートは9日間の期間中、指定の25カ所に何度でも入れる。連日のバスツアーは女性たちでにぎわい、県内各地からリピーターも多い
 ▼参加6回目となる當山美枝子さんの庭は鮮やかな花々に囲まれ、まさに千紫万紅。平日でも300人が足を運ぶ。「また来たよ」と入ってくる顔なじみとのゆんたくは時間を忘れ「病みつきです」。庭先で笑顔の交流が広がる
 ▼新たな施設を造らなくても、地域にある素材を観光資源として生かし、人を呼び込む。地元立脚型のこのヒット企画は、周辺の店への経済効果や南城ファン増加というこぼれ種も生み、まだまだ大輪の花を咲かせそうだ。