<金口木舌>脱セキュリタイゼーション


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 隣校の不良グループがうちの文化祭に乱入してくるらしい。けんかになってやられたら大変だし、内申書に傷が付く。だけど周りに警戒感はない。危機に対処するためにみんなをどう説得しよう

 ▼脅威に対して一部の仕掛け人が説得を試みて大衆の支持を得る「セキュリタイゼーション」。日本政府代表としてアフガニスタンなどの武装解除を指揮した伊勢崎賢治東京外大教授は高校生になぞらえて説明する
 ▼先の例では「やられる前にやっちまおう」という言葉をみんなから引き出すことに成功する。この手法、権力者が政治的な手段として使う傾向がある。重要なのは冷静な判断を持って先制攻撃の熱狂に水を差す「脱セキュリタイゼーション」だ
 ▼「沖縄の人は中国をどう見ているのか」と県外の人によく聞かれる。尖閣諸島周辺を中国船が航行し、海の安全を脅かしている。その割に沖縄の人は中国と友好的だ。なぜ、と
 ▼ただでさえ日中関係が悪化しているところに国会議員の靖国参拝が反発を呼び、外交日程が中止されるなど対話の道も閉ざされつつある。反感と不信のぶつかり合いが「やられる前にやっちまおう」を引き出しかねない
 ▼沖縄は王国時代からの長い交流の歴史とともに、2度と戦場になりたくないという意思がある。冷静な「脱」で、アジアの緊張を解く役割を果たせるのは沖縄かもしれない。