<金口木舌>沖縄の色は見えるのか


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 虹は何色あるかご存じだろうか。何を今さらと鼻で笑うかもしれないが、時と場所が変われば答えは異なる。日本では赤・橙(だいだい)・黄・緑・青・藍・紫の7色。だが米国では、藍がなく6色が常識だ。ドイツやロシアでは橙も抜けて5色、アフリカでは赤と青の2色しかない地域もあるらしい

 ▼日本で7色が定着したのは明治以降。万有引力を発見したニュートンが世界で初めて7色と主張し、それが教科書にも取り入れられた
 ▼「古事記」の時代、日本人が認識していた色は青・赤・黒・白の4色だったそうだ。黄色が登場するのは平安以降。古代の日本人にとって虹は赤と青の2色だけだった(佐竹昭広著「古語雑談」)。そもそも、色の概念がないと、言葉もなく、認識もできない
 ▼4・28「屈辱の日」沖縄大会は緑を統一カラーに決めた。「平和で緑豊かな沖縄」を表すという。那覇市は独自に「無念、失望」の意味を込めた紺を庁舎に掲げる。当日は緑と紺が沖縄の思いを全国に発信する
 ▼東京で開かれる政府主催式典では、日の丸の赤と白が祝賀ムードを演出するのだろう。参加者たちには緑や紺に託された沖縄の訴えが目に映るだろうか
 ▼古代の日本人が多様な色を認識できなかったように、狭量な歴史観しかなければ、沖縄の歩んできた苦難の道のりは見えないはず。この国が多元的な思考を取り戻すのはいつなのか。