<金口木舌> 国際競争の時代、人生の勝者を


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 野球やサッカーの日本代表が世界を相手に闘うゲームの勝敗は大きな関心を呼ぶ。日本のプロ野球選手が米大リーグに転身し活躍する姿もお茶の間に定着した。スポーツ界はオリンピックに限らず、国際競争が進んでいる

 ▼経済界もその流れにある。TPP参加の是非のように一筋縄にはいかないが、国際競争の世界へ踏みだしつつある。そんな中、東大は国際競争に勝てる人材を育てるために秋入学を構想中だ
 ▼この時代を生き抜く人間をどう育てるか。海外で学ぶのは一つの方法だ。ただ沖縄から出て県外や海外で学ぼうとすると一般的4年制大学で生活費を含め1、2千万円掛かると言われる。親にとって大きな出費だ
 ▼一方で学生の方は外で学ぶ意欲が高まっている。琉大の海外短期留学プログラムは応募、派遣者ともに年々増加傾向にある。県外就職を望む学生の増加を指摘する教員も多い
 ▼だがそもそも国際競争力は何のために必要か。スポーツジャーナリストの二宮清純氏の言葉は示唆に富む。「ゲームの勝者は必ずしも人生の勝者ではない。両者はしばしば同一視されるが、全く別ものだ」
 ▼海外で学ぶ最終目標はマネーゲームの勝者ではないはずだ。生きる力、他者への理解、チャレンジ精神など得るものは大きい。外を目指す若者を応援する仕組みをいま一度、考えたい。「人生の勝者」を育てるために。