毎年4月29日、沖縄市の泡瀬漁港で開かれているウミンチュの行事「パヤオまつり」を訪ねた。海の幸を求め、多くの市民でにぎわった
▼パヤオとは浮き魚礁のこと。海面の漂着物に回遊魚が集まる習性を漁業に生かした。国内で初めて伊良部町漁協がパヤオ漁を始めたのは1982年8月8日。この日は「パヤオの日」と呼ばれている
▼洋上で浮かぶパヤオの実物を泡瀬漁港の岸壁で見る機会があった。不思議に思ったのは、海面下に沈む部分に古タイヤの切れ端が数十本も結わえ付けられていること。いったい何に使うのか
▼釣り音痴の疑問に答えてくれたのは沖縄市漁協パヤオ研究会の池田博会長。古タイヤの切れ端は小魚の隠れ家になり、それを追って回遊魚が集まるのだという。ウミンチュと魚の知恵比べを垣間見た思いがした
▼魚相手の知恵比べにウミンチュはしのぎを削り、釣り愛好者はその醍醐味(だいごみ)に熱中する。国同士の交渉は一筋縄ではいかぬ。尖閣問題をめぐる知恵比べが災いしたか、日台漁業協定で好漁場を狭められ、ウミンチュは困惑の体(てい)
▼地元の頭越しに決着を急いだ政府への批判は根強い。国吉真孝県漁連会長が漏らした「沖縄は日本ではないみたいだ」という言葉にうなずく県民も多いだろう。外交の知恵比べに沖縄がまき餌のように使われるのはまっぴら御免だ。対米関係もまたしかり。