<金口木舌>救急車はワーウーと鳴る


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 救急車のサイレンは「ピーポー」ではないと知って驚いた。「昔(んかし)人(んちゅ)には『ワーウー、ワーウー』と聞こえる」。沖縄語普及協議会会長の宮里朝光さんが話していた

 ▼赤ちゃんの泣き声もオギャーではなく「ンガー」、ウグイスは「フーチョイ」、鶏は「コッコローウー」と。母語であるうちなーぐちの味わい深い響きが消えたのを宮里さんは嘆く。先人は固有の擬音語を培ってきた
 ▼先日の4・28沖縄大会では、うちなーぐちが随所に登場した。稲嶺進名護市長は「ならんしぇーならん」(できないことはできない)、東條渥子県生協連会長は「あんし恥ちらー」(どれほど恥知らずか)と母語で憤った
 ▼会場が一体となった「がってぃんならん」五唱も、しまんちゅのアイデンティティーに根差した等身大の言葉。「頑張ろう」よりもしっくりきた
 ▼琉球の言語は、日本に併合されて以来、同化政策として迫害され、自らも否定してきた負の歴史がある。しまくとぅば普及へ向け、県は10年間の推進計画を立てる。6月には県民意識調査も始める。琉球語再生への一歩だ
 ▼今、しまくとぅばを聞けて話せる人は45%、特に40代以下で激減した(琉球新報調査)。背景には、学校でも家庭でも話す機会を減らしてしまった「失われた数十年」がある。「生(ん)まりジマぬ言葉(くとぅば)忘(わし)ーねー、国ん忘ゆん」。主権も言葉もワッタームンとして取り戻したい。