<金口木舌>ヤギから始まる自立


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 ヤギといえば、汁か刺し身が定番だが、炭火焼きや串焼きもいける。独特の臭みも気にならず、適度な歯応えもいい

 ▼山原ヤギ生産組合顧問の我喜屋宗弘さんに新しいヤギの食べ方を教わった。ヤギ肉ギョーザやソーセージなどもこれから試作するという
 ▼ヤギ肉は独特のにおいで好みが分かれる。調理法を変えて消費を拡大するのも重要だが、我喜屋さんらが挑むのは、ヤギ食文化の継承と自立経済の土台をつくること
 ▼品種改良で大型化も進めており、将来はヤギ生産を輸出産業に成長させるのが目標だ。広大な市場もある。宗教上の理由で牛や豚を食べられず、ヤギ肉消費の多いアジア圏だ。県産ヤギで海外進出という壮大な夢がある
 ▼現実的かどうかを問うよりも、その志に共感する。中央と沖縄の溝が鮮明となった4・28をきっかけに、沖縄の自立がかつてないほど真剣に論じられる。ヤギによる自立も、それぞれの立場から可能性を探る一つの試みといえる
 ▼琉球独立もテーマになった4月のシンポジウムで印象に残る発言があった。「自らの歴史に学び、自らの土地で生きるという、日本人が何の疑問も抱かずに享受している権利が私たちにもある」。「自らの土地」で生きるには、文化や精神の自立と、それを支える経済も不可欠だ。大所高所の議論と同時に、足元からの「自立」も探ってみたい。