<金口木舌>かわいい電車が行く


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 「じぇじぇじぇ!」。驚きが大きければ大きいほど、「じぇ」の数が増えていく。早くも「今年の流行語大賞になるのでは」との呼び声が高いそうだ

▼「じぇ」の発信源は、NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」。ドラマの舞台となる岩手県久慈市小袖地区で実際に使われている方言だ。人を奮い立たせるような響きは、ウチナーグチの「あきさみよー」にも似て面白い
▼ドラマに1両編成の「北三陸鉄道」が登場する。都会と地方をつなぐこの電車が、重要な役割を果たしている。東京の暮らしになじめず、母と古里に戻り、海女を目指す高校生・ヒロインのせりふが、過疎に悩む町の現実を表している。「きれいな海、おいしいウニ、かわいい電車、それだけじゃ人は生きていけない」
▼昨年5月、宮城県と岩手県を訪れた。鉄道が復旧せず沿岸部までたどり着くためにバス、タクシーを乗り継いだ。寸断された線路は赤くさび付き、駅周辺は人の気配がない。大震災から1年2カ月すぎていたが、街には津波と地震の爪痕が深く刻まれていた
▼先月、三陸海岸を走る三陸鉄道南リアス線の一部が2年ぶりに復旧したというニュースに「じぇじぇじぇ!」と心が躍った。来春には全線開通を目指すという
▼寸断された線路が少しずつつながっている。小さな電車が人々の心をつなぎ、街に再び活気をもたらしてほしい。