<金口木舌>「なとーん」が描くもの


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 気が早いと言われそうだが、ウチナー版・流行語大賞を設けたならば、間違いなく「がってぃんならん」が今年の受賞候補の筆頭に挙がるはずだ。この言葉ほど今の県民感情を言い当てたものはない

▼「主権回復の日」に抗議した「がってぃんならん」五唱は沖縄の異議申し立てを鮮烈に発信した。それとは対局にあるしまくとぅばを沖縄市内の会合で最近耳にする。その言葉とは「なとーん、なとーん」
▼用法はこう。模合などでお互いの活動や近況を語り合いながら拍手で称賛や共感を表明し、「上出来だ」という意を込め「なとーん」を連呼する。その際、握りこぶしを掲げるのだが、タイミングが難しい
▼ルーツは台湾。沖縄市出身の諸喜田伸さんが会長を務める台湾県人会が乾杯の時に連呼する「いいぞ、いいぞ」が原形だ。昨年11月に帰省した諸喜田さんを囲む交流会で披露した途端、「なとーん」に転じた。コザならではのアレンジが効いた
▼地域興しの場で少しずつ広まっている。酒席が中心だが、単なる空騒ぎではない。基地あるゆえの矛盾を抱えたまま復帰41年を迎える沖縄の縮図のような街で、自らを鼓舞しているのだと解釈したい
▼「がってぃんならん」と「なとーん」は真逆に見えるが、今の沖縄では同じ響き、波長を感じる。いずれも厳しい現状を乗り越えようという意志に根差しているのだろう。