<金口木舌> 辺野古の海、幻はどっち


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 久しぶりにワクワクするニュースに出合った。ブラジル・リオデジャネイロ沖の大西洋海底で大陸の痕跡が見つかったという(8日付9面)

 ▼幻の大陸アトランティスか、とニュースを伝えるテレビ画面に身を乗り出したが、冷静に聞くと、岩石の年代から、アトランティスとは違うようだ。それでもはるか昔に大陸があったことは事実。人の痕跡もあるのか、夢は広がる
 ▼幻の大陸ほどではないが沖縄の海にも「幻」と呼ばれる場所がある。最も有名なのは宮古島市の「八重干瀬」。規模は小さいが、名護市辺野古沖のリーフも一年のうち潮の干満が大きな数日しか海面上に姿を見せない
 ▼4月末、住民らによる辺野古沖でのリーフ観察会があり、現地の写真を見せてもらった。所々に原色のサンゴが広がる様子は宝石箱のようだ。一帯のサンゴは白化現象で一時ほぼ死滅したが、十数年かけて回復したという
 ▼自然が持つ治癒力に驚くが、せっかくよみがえったサンゴを再び人の手で埋めようと考える立場の人がいるのは残念だ。ぜひとも次の大潮には、足を運んで辺野古の海の豊かさを実感してほしい
 ▼ロマンをかきたてる「アトランティス伝説」はまたしても幻に終わるかもしれないが、辺野古の海に生きるサンゴは現実として、そこにある。多くの県民が無理だという埋め立て計画こそ実は「幻」ではないだろうか。