<金口木舌>だれの番号?


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 言い回しや表記を変えるだけで堅い印象が緩むことがある。9日に衆院が可決した「マイナンバー(共通番号制)法案」はその典型と言えるかもしれない

 ▼公募で決まった名称だが、以前は「国民総背番号制」と呼ばれていた。社会保障と納税情報の一元化を目的に、赤ちゃんからお年寄りまで全国民に番号が振られる。国が付けるのに「私の番号」と呼ぶのは何か変
 ▼名称に頭をひねった官僚の姿が目に浮かぶよう。作家の辺見庸さんは個人情報保護法が2003年に成立した際、「『個人情報管理法』がより実相に近い名称」と語った。メディアや市民が官製造語に敏感になるべきだ、とも。官から見るか、民から見るかで言葉の印象は違ってくる
 ▼そう考えると、在日米軍駐留経費負担を「思いやり予算」と呼ぶのも変だろう。日本が米国へ向けた「思いやり」であって、基地過重負担に苦しむ沖縄から見れば「基地押し付け予算」と言った方がしっくりくる
 ▼それはそうと、「共通番号制法案」がさほど問題になっていないのが気掛かりだ。個人情報流出の懸念が指摘され、かつては国論を二分していた。浮かんでは消えた「国民総背番号制」に比べると関心は薄い
 ▼手続きの円滑化や納税の公平感に意義を見いだすのか。個人情報の一極集中に線を引くのか。官の視点ではなく、民の視点でチェックが欠かせない。