<金口木舌>男性手帳はいかが


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 期待と異なる贈り物をされて「ほら、うれしいでしょ」と感謝を強要された時のモヤモヤ感とどこか似ている。安倍政権が矢継ぎ早に打ち出す女性の就労支援や少子化対策だ

 ▼3歳までの育児休業、女性の早期出産を促す「女性手帳」、保育所への株式会社参入促進、企業への役員登用要望などなど。隔靴掻痒(かっかそうよう)というか、とんちんかんというか。実際、当の女性からの評判は今ひとつのようだ
 ▼中でも「女性手帳」への風当りが強い。政府の「少子化危機突破タスクフォース」によれば、日本は妊娠出産の知識が先進国最低で、自らの体に関心を持つ女性は少ない-から、若い女性に適齢期を知らせる必要があるそうだ
 ▼そもそも知識不足で少子化になるのか。そんなことはあるまい。内閣府のアンケート調査では、子育てへの不安要因は出産年齢よりも経済的負担や仕事と育児の両立、不安定な雇用だ
 ▼出産に踏み切れないのは経済的な面や「家庭と仕事を両立できるか」といった懸念が大きい。男性の育休が3%に満たないことを考えると、「家庭と仕事の両立」のしわ寄せが女性に偏っている現状が問題では
 ▼安倍首相が言う「女性が輝く日本」の近道は出産、育児がしやすい制度の整備と、男性が家事・育児に参加する意識改革だ。むしろ必要なのは「男性手帳」では。そう問われたら、首相はまともに答えられるか。