<金口木舌>情報の風、地方から


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 思い出してほしい。鳩山政権が普天間飛行場の県外移設をめぐり、ふらついていた3年前、在京メディアの多くが「米国が怒っている」「同盟の危機だ」と繰り返し報じた。印象操作のようだった

▼そして今。安倍晋三首相の歴史認識をめぐり、米メディアが「歴史を直視していない」と一斉に批判し、米議会も「米国益を損なう」と警戒している。なのに、在京メディアの報道がおとなしいのはなぜか
▼ニューヨーク・タイムズのマーティン・ファクラー東京支局長は著書「『本当のこと』を伝えない日本の新聞」で、大手紙記者の中に、この国を導いているという権力側と似た感覚があることを指摘する。その上で、政府と距離を置く「地方紙にこそチャンスがある」と期待する
▼面はゆい限りだが、確かに、4・28問題で多くの地方紙が沖縄に理解を示す社説を掲載した。高知や北海道、山陰中央、佐賀の各新聞は琉球新報の記事を転載し、沖縄の声と思いを伝えた
▼佐賀大の吉岡剛彦准教授は、福島や沖縄の問題を一地域に押し付け「局地化」「他人事化」する風潮が強まっているとして、東京発の情報を相対化する視座を持とうと論じる(3日付佐賀新聞)
▼全国紙の毎日新聞も今月「琉球新報から」の欄を新設した。ネット上にゆがんだ情報も流布する中、各地の新聞と連携して沖縄の実像、生の声を届けていきたい。