<金口木舌>ピンチを好機に変えよう


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 オロナミンCやボンカレーなどヒット商品を生んだ大塚製薬の創始者、大塚正士はピンチを逆手に取る機知に富んでいた。31歳で製薬工場を父から譲り受ける。ある日、工場から「フラスコに八十数匹のゴキブリが入っていた」と報告を受けた

 ▼洗浄を怠ったのが原因だが、大塚は部下を責めるどころか興奮した。「中に残っていた抗生物質が誘引したに違いない」。すぐに商品化を命じ誕生したのが大ヒット商品「ごきぶりホイホイ」だ
 ▼失敗した時こそ真価が問われる。研修を終えた新入社員や、仕事に慣れない若者の中には「5月病」に陥った人もいるだろう。だが失敗から学ぶことは多い。勝ちっ放しの人生などない
 ▼一度志した仕事なら、失敗しても挑み続ける姿勢は大切だ。県内では若者の高い離職率が取り沙汰され、中高年からは「今時の若者は根性がない」との嘆きも聞こえる
 ▼だが沖縄の若者の底力は捨てたものではないはずだ。興南高校を甲子園春夏連覇に導いた我喜屋優監督は4季連続で甲子園に出場したが、ベンチから伝令を送ったのは二度だけという。ピンチを乗り越える力への信頼に、生徒らは応えた
 ▼「逃げるより闘った方が楽」。仕事でくじけそうな時、先輩の言葉がいつも心に響く。失敗し悩んだ時は先輩の乗り越え談を聞き出し、心に湧く“逃避虫”をホイホイと退治してみてはどうか。