<金口木舌>うちなーぐちでラジオ体操


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 毎日午後4時。那覇市の平和通りが面白い。「りっか、もーらなさい」(さあ踊りましょう)と、うちなーぐちのラジオ体操が流れてくる

▼「けんな(腕)みぐらし(回し)みそーり」「てぃー(手)がまく(腰)んかい当てぃてぃ」との掛け声に合わせ、店の前に並んだ店主らが一斉に体操を始める。一瞬驚いた買い物客も、すぐに笑みがこぼれる
▼平和通り商店街振興組合が1年前から始めた取り組みだ。買い物袋を置き、その場で一緒に体を動かす地元客や修学旅行生もいる。通りの空気が和む。「健康づくりと、毎日面白いことがあればという遊び心で始めた」と専務理事の矢野弘子さん
▼独自色を出そうと、うちなーぐち版にはこだわった。金武町も、昨年4月から町内有線放送で毎日午後3時に流している。本年度の町施政方針にうちなーぐちラジオ体操の活用を盛り込むほど気合が入る。宮古、石垣にも島言葉版がある
▼ラジオ体操が生まれたのは1928(昭和3)年。戦時中は「米・英・撃・滅」の掛け声で皇国精神徹底のため利用され、GHQが「号令一つで300万人が動くのは恐ろしい」と廃止を求めたこともあった
▼かつて国民統一に使われた体操が、今や各地のお国言葉で多様に楽しまれ始めている。平和通りの試みは動画投稿サイトでも話題だ。新たな名物は、商店街の体力アップにもつながるに違いない。