<金口木舌>落ちない話


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 毎年楽しみにしている落語会がある。名護市の重要文化財「津嘉山酒造所施設」で開かれる宵・酔・寄席ライブ。ことしも25日の夜にある

▼県内で活動する「おきらく亭」一門が出演し、去年は古典の「金明竹(きんめいちく)」で、長い口上にウチナーグチを交えて沖縄らしさを出していた。死神と組んで金もうけをたくらむ男の話は、自らの命を示すろうそくを自分で吹き消す予想外の落ちに爆笑した
▼大笑いしたり、くすりとさせられたり、落語を聞いていて思うのは「落ち」のうまさ。落語は「人間の業の肯定」と言ったのは立川談志さんだったが、確かに人の強い部分だけでなく、ずるさや弱さといった心の動きも笑いにくるめて見せてくれる
▼ただ落語の「落ち」と違って現実の世界は「落ちない」話に戸惑うことも多い。辺野古移設は既定路線だから、あえて選挙公約に書かないという話は、「なぜだろう?」と素朴な疑問が浮かんで宙ぶらりんの気分
▼医療や教育環境充実など振興策と引き換えに辺野古移設推進を国に求める「地元」議員団の方々の動きも、いささか「腑(ふ)に落ちない」話だ
▼振興策や負担軽減という甘い言葉がちりばめられるが、すんなり得心がいくものだろうか。昨年の世論調査で、県民の9割が反対する辺野古移設はほとんど物語の世界だ。「落としどころ」なんてないのが現実と思うのだが。