<金口木舌>記録でなく好奇心


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 なんとすがすがしい光景だろう。24日付本紙1面に掲載された写真。冒険家の三浦雄一郎さん(80)が世界最高峰エベレスト(8848メートル)に立ち、世界の屋根と呼ばれる山々を見下ろす。史上最高齢で世界最高峰の登頂に成功した

▼2008年2月、75歳で2度目のエベレスト登頂を達成する直前、本紙主催の琉球フォーラムで講演し「諦めずに小さな一歩一歩で夢実現へ向かいたい」と語った。言葉通り、5年ごとに3度も前人未到の記録を打ち立てた。心から拍手を送りたい
▼登山は若いころからの目標ではなかった。世界七大陸最高峰のスキー滑降を達成した後、「飲み放題・食べ放題」の生活を続け生活習慣病に。そこで「どうせダイエットするなら、その先に目標があってもいい」と、エベレスト登頂を決めたという
▼以前、三浦さんらが親子三代の遺伝子を調べたところ、スーパーアスリートや長寿の遺伝子は見つからず、平均的なものだった。旺盛なチャレンジ精神と地道な努力が三浦さんの快挙を支えた原動力なのだろう
▼長生きの三大秘訣(ひけつ)は「食べ物」「運動」「生きがい」とされる。そのうち「運動」と「生きがい」の大切さを三浦さんの生きざまは教えてくれる
▼「記録にはこだわらない。自分がどこまでできるのか好奇心がある」。85歳でも再登頂しそうな勢いだ。チャレンジ精神は、実にあっぱれだ。