体を動かすのは苦手でもスポーツ観戦は好きだ。毎年5月に、本島北部の離島で開かれる「やんばる駅伝」は国頭村の初優勝で幕を閉じたが、ことしも数々のドラマがあった
▼親子でたすきをつないだ選手や長年の功績をたたえて監督を独自に表彰した選手らがいた。レース後にある懇親会で、市町村の垣根を越えて選手らが交流を深めるのも大会の良さだ
▼あるチームの慰労会では、コーチが孫のような若手に駅伝の面白さを伝えていた。突出したエースが一人いても勝てない、全員の力をまとめる難しさ、戦略を練る妙味は一味違う。コーチいわく「駅伝は人生そのものだよ」
▼よく人生に例えられるのはマラソンだ。山あり谷あり、苦難を自らの力で乗り越えてゴールを目指す-。42・195キロの道中に感情移入するのは、人生も反映させて観戦するからだろうか
▼さらに駅伝はもう一つの魅力がある。全員が力を合わせて一つの目標に向かうこと。優勝チームの談話にもあったが、たすきがつなぐのは、選手間の信頼でもある。懇親会で語り合う選手たちには、共同体のような絆も感じられた
▼きょうから6月。沖縄は23日の慰霊の日へ向けて、鎮魂の月を迎える。学校などでは平和学習が盛んになる時期だ。駅伝チームのように歴史や教訓、人の信頼という“たすき”を次代につなぐ日々を大事に過ごしたい。