<金口木舌>森を守るのは誰


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 基地がないと沖縄経済は成り立たない-などの“神話”と似たような俗説の一つに「北部の自然を開発から守ったのは米軍基地」というものがある。本当だろうか

 ▼ギンリョウソウ、カシノキラン、ユウレイラン…。片仮名ばかり続いて恐縮だが、どれも米軍北部訓練場に隣接する東村高江で見つかった絶滅危惧植物の名前だ
 ▼最近、高江では新種のカニムシや奄美固有種とみられた甲虫も確認された。多くの固有種がすむやんばるの森の中は、まさに博物館のようだ。あらためてその奥深さに驚かされる
 ▼確かに野生ランの危機は開発や乱獲、人にも原因があった。だからといって、これらの生き物を守ったのが基地だというのは疑問だ。高江で進む着陸帯建設だけでなく、演習や基地内の造成による赤土流出など過去に繰り返された被害を見れば分かる
 ▼北部に集中するダムの水源は高江周辺にあるという。その自然が失われたら、水源地にヘリが落ちたら、高江住民だけの問題に限らない。水の恩恵を受ける中南部の住民にとっても高江は身近な問題のはずだ
 ▼失われゆく花々、新たに見つかる虫たち、そしてこれから見つかるだろう多くの生き物たち。やんばるにはまだまだ人間の知らない世界がある。世界に誇る宝は基地の中に閉じ込められているだけかもしれない。それを守るのは沖縄に住む私たちの責任だ。