<金口木舌>「強い国」を憂いて


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新聞紙上で時折見かけたなだいなださんの社会批評には、暮らしの中で庶民が実感する憤りをユーモアの衣に包み込んで差し出すという趣きがあった。歯応えがあり、ピリッと辛かった

▼全国紙に安倍内閣の印象を問われ「お坊ちゃんかき集め内閣」と評した。アベノミクスにも手厳しく、円安による原材料高騰に伴うマヨネーズ値上げを「安倍値上げ第一号と呼びましょう」とブログに記した
▼ここに庶民感覚が生きている。「政治は、考えも大事ですが、ネーミングも大事です」が持論だった。そのなださんは、安倍首相が掲げる「強い国」に対置するように「賢い国」を提唱した
▼領土問題を念頭に「強い国になる競争をすれば行き着くところは戦争だ。賢い国になれば、戦争なんて馬鹿(ばか)げたことは避ける工夫をする」と論じた。税金ばらまき型の施策に対しては賢いお金の使い方を求めた
▼政府の沖縄政策も、なださんは「賢さ」の欠如を見たようだ。「日本はアメリカに忠誠心を示すために、沖縄の基地を提供しているにすぎない」と断じた。ここではユーモア抜きで正面から批判した
▼「強い国」の行く末を憂い「賢さ」を説きながら逝ったなださんは、政治家と記者には「馬鹿」を求めた。社会の不条理と愚直に向き合えという訴えだ。その場しのぎの小利口は国を誤らせる。しかと心に刻みたい。