<金口木舌>スべる政治


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 「スベる」という言葉に、冗談が受けないという意味が出てきたのは1990年代。最近は、良かれと思ってしたことが喜んでもらえないなど「期待はずれ」の意でも使う。高支持率を誇る安倍政権も最近、スベりがちだ

▼アベノミクス第3の矢は「10年間で1人当たり国民総所得を150万円増」を打ち出した。かつての池田内閣の所得倍増計画並みの効果を期待したか。ところが株価は急落した
▼憲法改正のハードルを下げようと、首相が意欲を見せる96条改正には直近の世論調査で過半数が改正に「反対」。改憲論者からも、「邪道」と異論が出る96条改正に国民の目も厳しい
▼第1次安倍内閣で首相退陣の序章は参院選の惨敗だった。そんな経緯もあって7月に迫った参院選に向け、国民受けする政策づくりに腐心しているのだろう。でもどこか腑(ふ)に落ちない
▼首相の頭には自民党優位と言われながら減税発言を二転三転させ大敗し、橋本龍太郎首相が退陣した98年参院選が教訓にあるという。ならば、景気回復や憲法論議で国民の声にしっかり耳を傾けるのが筋では。数字やルール改変で小細工をしても国民の目は騙(だま)せまい
▼米軍普天間飛行場の返還・移設問題は、やはり地元の反対を顧みず進めるのか。何年も経ってなぜ問題が未解決なのかよく考えてほしい。ブラックジョークでも基地問題で「スベった」は許されない。