<金口木舌> 沖縄戦と子ども


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 夜の漆黒の海に投げ出された子どもたちの衝撃はどうだっただろう。69年前、親と離れれて九州へ向かう集団疎開のために対馬丸に乗り込んだ子どもたちの体験は想像を絶する

 ▼9年前、『沖縄戦新聞』で対馬丸の生存者数人に壮絶な体験を聴き取りした。記者が沖縄戦当時にさかのぼり、体験者の証言を当時の年齢のまま紙面化する企画だった
 ▼齢(よわい)70を超えた体験者の話を何時間も聞いているうち、あどけない少女、少年の顔が浮かび、重なった。「証言の力」が、記者を60年前の現実に引き寄せた
 ▼国民学校の6年生だった儀間真勝さんは11歳当時の記憶が鮮明に残っていた。儀間少年は、いかだにつかまり救助を待ち続けた。隣にいた少年3人が姿を消し、翌日にはまた2人がいなくなった。過酷な体験を振り絞るように語ってくれた儀間さんの姿が強く印象に残る
 ▼本紙で2年前から続いている『未来に伝える沖縄戦』も、子どもの目線で沖縄戦をとらえた連載だ。体験者は子どもたちの目を見つめ、分かりやすい言葉を探しながら語り掛ける。「勉強は大事だよ」。学校で友達と遊んだり、机に向かうことができなかった時代が再びあってはならないというメッセージを込めて
 ▼本来、戦争と無縁であるはずの子どもが戦場で右往左往させられた時代を教訓にしなければならない。史実をしっかり受け止めたい。