<金口木舌> 究極のもったいない


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 数年前、ベストセラーになった絵本「もったいないばあさん」は子どもたちの間で不動の人気を得たようだ。「もったいなーい」と叫びながら突如現れ、無駄をなくす知恵を授けてくれるキャラクターがうけている

 ▼先日、子ども同士で定番のせりふを言い合うのを聞き、ふと大人社会にはびこる無駄遣いに思いをはせた。地球環境保護を訴え、もったいない運動を世界的に展開する団体プラネット・リンクは「もったいない」の究極に世界の軍事費を挙げる
 ▼第三世界の子どもたちに最低限の生活を保障するために必要なお金は年間約8兆円という。世界の軍事費はその21倍を超える約172兆円にも上る
 ▼日本も人ごとではない。国内の子どもの貧困率は最近25年で1・5倍に増え、今や6人に1人が貧しい。先進20カ国で4番目に多いという
 ▼それをよそ目に、隣国との火種はくすぶり続ける。尖閣問題をめぐっては、中国公船による日本領海への侵犯が増える一方、日本も南西諸島の警備強化に向かう。緊張が高まるほど経費は増えるだろう。偶発的な武力衝突を懸念する向きもある
 ▼もったいないばあさんの声は両政府には届いていないようだ。代わって大人同士がもっと声を大にして「もったいなーい」を叫べないものか。貧困のまま、未来を担う子どもたちの可能性が奪われ続けていることが、つくづくもったいない。