<金口木舌> ウチナー版「個の力」


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 2分以上は話さない。これは観光客相手のまち歩きガイドの要諦という。コザの情報発信と地域おこしに取り組む沖縄まちまーい協議会の鈴木雅子さんが教えてくれた

 ▼短時間で名所説明を切り上げ、その後は観光客から質問を募り、会話を導く。その方が観光客の満足度を高めることになるようだ。退屈そうにしている人には声を掛け、会話に引き込むという気配りも忘れない
 ▼案内役としての説明力だけではなく、会話を生む力もガイドの技量ということだ。もちろん豊かな知識に裏打ちされた名所説明は欠かせないが、その後の会話は深い理解と共感を広げる場となる
 ▼コザに限らず、名所・旧跡は地域の財産。そこに立つガイドの采配次第で、より大きな情報発信と文化創造につながる。ガイドは単なる案内人の枠を超え、地域コーディネーターとしての役目を帯びる
 ▼平和学習でも同じことが言えるだろう。戦争遺跡を前にした沖縄戦体験者や平和ガイドと修学旅行生ら若い世代との会話は、体験継承と平和創造の場となる。体験者やガイドは平和の種まきとなる
 ▼地域への理解と愛情、さまざまな体験に根差した会話は街をつくり、平和を支える。専門職のガイドだけでなく地域住民もその担い手となり得る。有名サッカー選手に倣えばウチナー版「個の力」を発揮できそうだ。フィールドは目前に広がっている。