<金口木舌>DVの大本は


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 米国の歌手エミネムのヒット曲 「ラブ・ザ・ウェイ・ユー・ライ」はラップに乗せた歌詞に背筋が凍る。「愛しすぎて」と訴えるのに「最悪な時はぶち切れる。彼女に手をあげた どれだけ自分に力があるかも分からずに」

▼去ろうとする彼女に「俺が悪かったと言ってるのに 俺の目を見てくれ」と謝り、「もし彼女が俺から逃げるなら ベッドに縛って家に火をつける」と脅す。人気女性歌手リアーナがコーラスする。「いいのよ 私はこの痛みが好きだから」
▼愛という言葉で暴力を正当化する男と、信じ込む女。しかし虚構は崩れ去る。一方の心が離れ、もう一方がストーカーと化し、事件を起こす例が後を絶たないという
▼県内でドメスティック・バイオレンス(DV)の加害者300人以上の相談を受けてきた名嘉智恵理さんは「他人をコントロールしたい、思い通りにしたいという気持ちが無くならない限り、加害者(の立場)から抜けられない」と言う
▼ソーシャルネットワークの普及が事件増につながっている可能性もあるという。別れても相手の動向が目に入ると感情が再燃し、連絡が取れないことで怒りを増す
▼法律を整備し被害者保護や警察捜査の体制強化を図ることも必要だが、問題の大本をたどり暴力を止めるアプローチも重要だ。DVの“芽”を摘むには家族や地域の連係プレーも欠かせない。