<金口木舌>世界自然遺産登録への道は


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 上京時、飛行機の左窓側を取り、富士山を望むのはちょっとした贅沢(ぜいたく)だ。四季折々の姿こそ違え、優雅で美しい稜線は信仰の対象となり得る神々しさ。世界遺産登録を決めたのはめでたい

 ▼その富士山に向かって実弾演習をするのは「霊峰に失礼だ」との声を地元の人から聞く。裾野の東富士演習場は自衛隊の演習地だが、米軍の県道104号超え射撃訓練の一部移設先にもなっている。確かに「霊峰・富士」への実弾射撃は、不謹慎に思う
 ▼世界遺産は核となる「構成資産」と、それを守る「緩衝地帯」があり、一定の使用制限がかかる。世界遺産のエリアに軍事施設が入るのは国内初。使用制限を懸念したか、演習場は事実上規制のない「保全管理地区」となった。今後の自然環境保全を考えると違和感が残る
 ▼世界自然遺産の登録を待つやんばるの森。その中にあり、国頭、東両村の28%を占める米軍北部訓練場は、演習や開発で赤土が流出し、過去には枯れ葉剤の使用を米退役軍人省が認定した
 ▼隣接する東村高江では山を切り開いて米軍ヘリパット建設が進む。仮にやんばるの森が自然遺産登録されるとして、訓練場は規制のない「保全管理地区」にするのだろうか
 ▼今のような米軍の使いたい放題では生態系を壊しかねない。「世界的な生物多様性保全の上で重要」とされた森。登録への近道は訓練場の返還だと思われるのだが。