<金口木舌>世界を引っ張る


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 29日に始まった世界最高峰の自転車ロードレース、ツール・ド・フランスに日本からただ一人、新城幸也選手(28)が出場している。昨年もロンドン五輪出場直前に同大会を完走した。これから3週間のレースに挑む

▼自転車競技になじみの薄い沖縄。だが、歴史と伝統のあるヨーロッパでは、ツール・ド・フランスに出場することは大変な名誉だ。その大会にこれで4度目の出場。県民としても誇らしい
▼自転車競技との出会いは八重山高校3年のとき。フランスで活躍していたプロの福島晋一・康司兄弟が石垣島で合宿をした。練習会が行われた際、上り坂で新城選手だけが2人について行った。2人から「フランスに行かないか」と誘われた
▼高校卒業後、渡仏した新城選手は、福島兄弟と生活を共にしながら教えを吸収した。地道な努力で着実に力を付け、世界を舞台に活躍する選手に。自ら才能を開花させた新城選手にあらためて拍手を送りたい
▼特筆すべきは、強靱(きょうじん)な体力と精神力だろう。昨年4月、フランスの大会で落車し手首を骨折する大けがを負った。だが、わずか3週間後の全日本選手権に出場、上位に入った
▼昨年のツール・ド・フランス第4ステージでは、レースを引っ張る積極性が評価されて敢闘賞を受賞した。今大会でもレースをリードし、世界の注目を集めるか。沖縄からもエールを送ろう。