<金口木舌> 「口先お化け」はごめん


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 奇抜な表現に思わず噴き出してしまった。的確な批評眼にはうならされた。沖縄こどもの国が夏休みの催事に向けて募集したお化けの絵を見てのこと。子どもの観察力と想像力に感服することしきり

 ▼「パパおやじ」と名付けられたお化けには髪の毛が薄い父親の姿が投影している。得意技は「サラリーマンえいぎょう」で、苦手は「とつぜんの休み」という書き込みを添えた。口癖は「かしこまりました」
 ▼正反対なのが「ドキドキおばけにいと」。ニートという言葉に着想を得たようだ。このお化けは昼寝が好きで働くのが苦手。忙しいふりをするのに忙しいという。家族にモデルがいるのだろうか
 ▼8歳の子が描いた「黒男」というお化けには胸を突かれた。顔を鉛筆で塗りつぶし、周囲には紙幣や硬貨が描かれている。「かおがない」の添え書きも。金銭的利益を追求するあまり自己を失った大人への警告とみた
 ▼お化けになったわが身を想像してみた。連日、深夜帰宅の「酒気帯びお化け」か、週末は昼まで布団から抜け出せぬ「ぐうたらお化け」が相場か。人気者にはなれそうにない
 ▼お化けと言えば夏の夜。現実社会では政界夏の陣と呼ぶべき参院選の公示があすに迫った。政治家の公約の軽々しさにうんざりさせられる昨今、「口裂き」ならぬ「口先お化け」の出没は御免被りたい。子どもたちも見てますぞ。