興南中・高校の生徒が著名人にインタビューした本の出版を紹介する記事(2日付30面)を読んで、懐かしい企画を思い出した
▼各高校の生徒が卒業生を訪ねてインタビューする教育面の連載「人生の種まき」で、2001年から約3年続いた。記者は約束の取り方や質問の仕方を教えるが、人選や執筆・写真撮影は高校生に完全に任せた。先生にも「手伝わないでください」とお願いした
▼どんな人に話を聞いたのか、締め切りに間に合うか、原稿が届くまで期待と不安が入り交じる感覚は忘れ難い。経営者や歌手、アナウンサーなど著名人もいたが、無名の人物を取り上げた回も面白かった
▼納得いくまで転職を繰り返し、やりがいを感じる仕事を見つけた男性は「遠回りこそ人生の糧だ」。この時の高校生は「“とことん”という言葉の似合わない今の高校生にも情熱を感じさせる」と記事で応えてくれた
▼大人の言葉は私たちが思う以上に若者に刺激を与える。ところが最近は大人の言葉に軽さが目立つ。「従軍慰安婦」問題で的外れな持論を述べたり、「現実的」でないと公約を捨てたりする政治家がその典型か
▼興南中・高校の生徒はインタビューを通して自らの成長も実感したという。飾ることない正直な生の言葉こそが若者の心に響く。大人の一言は人生の針路になるかもしれない。それを肝に銘じたい。