<金口木舌>ミキティの決断に


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 大事な仕事を抱えているときに出産なんて。幼い子を人に預けるなんてかわいそう-。フィギュアスケートの安藤美姫選手が出産を告白した時に起こった巷(ちまた)の声だ。日本の働く女性の多くは、自身に向けられた言葉として聞き覚えがあるのではないか

▼出産後も競技を続ける選手は、国内ではシドニーとアテネ五輪の柔道金メダリスト谷亮子さんや、ロンドン五輪銅の女子バレーボール大友愛選手など数えるほどだ。しかし海外にはそうした選手は大勢いる。シングルマザーも少なくない
▼海外のアスリートは子育てと競技を両立している。日本ではいまだ子育ては母親の仕事という意識や、子どもをよそ様に預けるのは気が引けるという悪弊が両立の壁になっている
▼日本人の意識はコペルニクス的転回が必要、と言えば大げさか。出産による筋力低下は自助努力で補える。今必要なのは、ママ・アスリートのライフスタイルの変化を下支えする社会の弾力性だろう
▼インタビューで「疲れたり落ち込んでも、子供がいるから頑張れる」と語った安藤選手。モチベーション(動機付け)が高まり、嫌いな筋トレにも取り組んでいる
▼強化選手ではない彼女にとって五輪のハードルは高い。その頑張りを応援すると同時に、女性が子育てと仕事の両立に悩まなくて済む社会へ向けた議論も本格化させたい。