<金口木舌> 宮崎駿監督と憲法


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 「改正(かいせい)」とは憲法を変えることです-。憲法が施行した1947年、当時の文部省が発行した小冊子「あたらしい憲法のはなし」は、説明が分かりやすい

 ▼冊子は当時、中学校1年生用の教材として使われた。改正について「かえる手つづきは、げんじゅうにしておかなければなりません」と記述する
 ▼改憲論議が熱を帯びる中、「憲法を変えようなんて、もってのほか」と反対姿勢を鮮明にしたのは、アニメ映画の巨匠、宮崎駿監督。『となりのトトロ』など傑作を世界に送り出すスタジオジブリが、同社発行の小冊子『熱風』7月号で「憲法改正」を特集し話題になっている
 ▼宮崎監督は96条の先行改正を「詐欺」と断じ、「政府がどさくさに紛れて、思いつきのような方法で憲法を変えようなんて、もってのほか」と訴え、国防軍、徴兵制も否定した。代表作『ハウルの動く城』は厭戦(えんせん)的な作品だ。空襲で焼き尽くされる街、逃げ惑う人々。愛する人のために闘い、傷つく者を描いた
 ▼宮崎監督は基本的な心構えとして「今流行っていることはやるな」と警告。中身を熟知しないまま表層的なムードに乗るのではなく、立ち止まって考えようと促す。同感だ
 ▼改憲に意欲的な安倍首相が政権基盤を強化し、憲法論議も一段と活発化するだろう。国民の選択がますます重要となる。ムード先行ではなく、熟議を徹底したい。