<金口木舌>イクメンの発信力


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 ウィリアム英王子の母・ダイアナ妃はエイズへの偏見が強い中、積極的に患者を見舞った。その様子を映した写真は世界に配信され、偏見を取り除くきっかけになったといわれる

▼今回は、その親譲りの発信力を王子が父親デビューの形で披露した。赤ちゃんを乗せたチャイルドシートを持ち、自ら運転して退院した「イクメン」ぶりは格好よかった。あおるつもりはないが、社会現象になりそうな予感がする
▼英王室の人気は20世紀末から低下した。歴史家のアンドリュー・ローゼンは王室家族の私生活報道などとともに「ライフスタイルが時代遅れで不適切」と指摘した。(「現代イギリス社会史」岩波書店)
▼「いくつかの宮殿に住み多くの使用人を抱えて壮大なライフスタイルを維持している」ことがやり玉に上げられた。その後、英王室は女王の納税、経費の削減、性別の別ない長子優先の王位継承など改革を進めた
▼ウィリアム王子はシャツをまくって赤ちゃんを抱き、最初のおむつ替えを自分でしたと明かした。育児休業を取り、自ら育児に携わるという。そのイクメンぶりはしばらく話題を呼ぼう
▼出産を待ち続けた報道陣に「あなたたちもようやく普通の生活に戻れます。私たちも帰って、この子の世話をします」とキャサリン妃。「私たちも」とさらり言える英王室の新しい家族像も注目したい。