<金口木舌>足元の宝掘り起こす


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 マングローブに囲まれた川を進むと、岸には鮮やかな色の花が咲き誇る。「西表島みたいでしょう」。川を下りつつ説明するガイドの声も誇らしげだ

 ▼名護市中心部から車で10分ほど。我部祖河川をカヌーで下った。河口近くでガイドに促されて水に手を入れると、表面の真水はぬるいが、その下の海水は驚くほど冷たい
 ▼大浦湾では国の天然記念物「天仁屋の褶曲(しゅうきょく)」を目指してかいをこいだ。腕も足も日焼けでヒリヒリしたが、海上を滑る爽快感と褶曲の雄大さに疲れを忘れる
 ▼名護市内でカヌーを活用した観光商品開発が盛んになっている。西海岸の東屋部川で発光する生き物・海ホタルを見る夜のツアーもあった。大浦湾で日の出を見に行くツアーもある。東西の海岸に面し、市街地に川が流れるまちの特性を生かした取り組みだ
 ▼癒やし効果だけでなく、生き物観察、環境学習もできる。海や川は、そこにあるだけで貴重な財産だが、少し発想を変えれば、地元の人だけでなく外から人を呼び込む起爆剤としての力も秘めている
 ▼復帰後、宅地、産業用地、人工ビーチなどあらゆる場所が埋め立てられた。失った砂浜やコンクリートの護岸は元に戻らない。だからこそ手を加えず、魅力を生み出す工夫と知恵が求められる。まちの財産に付加価値を高めるカヌーツアーが「足元の宝」を見直すきっかけになってほしい。