<金口木舌>歩きたい街への転換を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 サイレンが鳴り響き、車の通行は右から左へ。のろのろ運転、ぐらぐらする車、横転するバス-。35年前のこの日の風景である。県内で交通革命とも呼ばれた「730(ナナサンマル)」だ

▼今年はモノレール開業から10年目でもあり、沖縄の交通政策を考える上で節目の年だ。県内の車の数は百万台を突破し、一家に2台の時代。県内の交通政策は、鉄軌道の導入や西海岸道路の整備など車社会をどう効率的にさばくかを主眼に置く
▼便利になるのはいいが、運動不足で腹回りが気になる中高年も多かろう。健康のために歩かない生活を変えたい-。これも県民のニーズだ。とは言え、屋外はとにかく暑い
▼それを言い訳に空調の効いた部屋にこもりがちだが、注目すべき取り組みが、隣の南国、鹿児島にある。鹿屋市の北田・大手町商店街は車社会の発達により、買い物客が鹿児島市に流れ「シャッター通り」になった。逆転の一手として“歩きたくなる商店街”構想を打ち出し、昨年11月から実行した
▼湧き水を利用した霧状の水をアーケードから散布するミストシャワーと緑のカーテンを下ろす。猛暑が多い今夏、体感温度が4度も低く、好評だ
▼「車は左、人は右」を連呼したナナサンマル。今後は健康のため「車はやめ、人は歩き」を叫べる街づくりができないか。交通政策と街づくりの合わせ技があってもいい。