<金口木舌>まがまがしい飛行機


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「美しい飛行機を作りたいんだ」。若き二郎はその夢に向かい、大平洋戦争時、世界最長航続力といわれたゼロ戦を設計する。宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」は堀越二郎をモデルにした作品だ

▼道の駅かでなで修学旅行生は軍用機に「かっこいい」と歓声を上げる。ある反戦ガイドはこう答える。「技術の粋を集めて作られた飛行機は当然かっこいい。僕もそう思う。問題は使い方だ」
▼機体に人ではなく政治が乗った時、飛行機はまがまがしい存在になるのか。ヘリコプターのように垂直に飛び立ち、飛行機の速さを兼ね備えるオスプレイは技術者にとって夢の航空機かもしれない
▼しかし死亡事故を繰り返し「未亡人製造機」と揶揄(やゆ)されても、米国は開発を続けた。構造的欠陥を指摘する米国内の専門家や県民の声に耳を貸さず沖縄に配備した。自衛隊にも1機100億円で売り込みを図る
▼「紅の豚」は戦争のむなしさを抱える元空軍兵の物語。「ハウルの動く城」は厭戦(えんせん)を描く。宮崎作品は戦争に批判的だ。「風立ちぬ」でも二郎たちが「ゼロ戦で飛び立った者は誰も帰ってこなかった」とつぶやき、犠牲になった幾多の命を想起させる
▼オスプレイの安全合意違反を指摘する県に「違反なし」と答えた日本政府。県民の恐怖や不安もお構いなしだ。沖縄の空を飛ぶまがまがしい存在は今月、2倍に増える。