<金口木舌> アートの力


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 見る者の感性を刺激してやまないアートの力。昨年末、県立博物館・美術館でアジアの女性作家たちによる展覧会『アジアをつなぐ-境界を生きる女たち1984-2012』を見て、魂を揺さぶられる思いがした

 ▼印象が強烈だった作品が、韓国のユン・ソクナムさんの『Pink・Room5』だ。ピンクの部屋に、とげが突き出たピンクのいす。今を生きる女性の不安定な心理とあふれる情熱が迫ってきた
 ▼フィリピンの作家は、性的暴力に遭った女性と子どもたちの心の回復につなげる作品を発表した。アジアの女性や子どもたちに共通する問題をそれぞれの感性で表現する。作家たちの目線の優しさ、鋭さに引き寄せられた人も多かったのでは
 ▼沖縄にも女性と平和にこだわり、絵筆を握る人がいる。宮良瑛子さん。沖縄戦を体験した女性の悲しみ、強(きょう)靱(じん)に生きる姿を描いてきた。来年4月に埼玉県の丸木美術館で個展を開く。「平和のために持続した活動をする美術館でやる意義は大きい」と意欲を示す
 ▼最近、宮良さんは福島第1原発事故をテーマに取り組んでいる。『祈り』に描かれた原子力発電所とランドセル。そこにいたはずの少女の気配、嘆きが伝わる。アジアの作家に通じる空気が漂う
 ▼現実の矛盾と格闘する女性作家たちの作品は、平和で平等な社会を目指す人々の力となろう。国境を越えた共感を伴って。