<金口木舌> 沖縄の天と地には


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 宮森小学校の「仲よし地蔵」にはめ込まれた銅板の地蔵を描いたのは武者小路実篤だった。理想郷「新しき村」を築き、「友情」などの作品で知られる小説家は、米軍機墜落事故を通じて沖縄と縁を結んだ

 ▼画家でもあった実篤による野菜や花の色紙を一度は目にしたことがあるだろう。絵に添えた句では「仲良き事は美しき哉」や「君は君 我は我也 されど仲良き」がよく知られている
 ▼「天に星 地に花 人に愛」も有名だ。1970年代の歌謡曲の題名に似た響きがあり、記憶に残る。教科書に載る小説家は、色紙を手にデザイナー兼コピーライターの才覚を発揮したようだ
 ▼名言を傷付けるようで申し訳ないが、この1カ月間の沖縄の出来事を皮肉ると「天にオスプレイ 地にダイオキシン 県民に怒」といったところだろう。あまりに興ざめで実篤は顔をしかめるだろうか
 ▼「天に地に」つながりで言えば、中国の「詩経」には「天に跼(せぐくま)り地に蹐(ぬきあし)す」がある。高い天の下で背をかがめ、固い地の上を抜き足で歩くような、身の置き場のない思いを指す。こんな窮屈な沖縄にはしたくない
 ▼「この道より我を生かす道なし この道を歩く」も実篤の名文句。今のところ沖縄が目指す道は日米両政府の意に添わないようだ。それでも足元をすくわれないよう、しっかり歩みたい。いつかは
星や花が見えてくるはずだ。