<金口木舌>培養牛肉と食べ残し


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 衝撃的なニュースが先日、世界を駆け巡った。イギリスで牛の幹細胞を培養した牛肉を使ったビーフバーガーが完成したというのだ

▼研究室で人工培養された「試験管」から産まれた牛肉ハンバーガーは世界初。オランダの研究者が開発した。どんな食感か、興味をそそられる半面、“不自然な食物”に未来の食卓が凌駕(りょうが)されるのかと不安もよぎる
▼食料問題の専門家は「人口急増で切迫する世界のタンパク質需給に解決策をもたらすもの」と評価する。食料難をしのぐ苦肉の策には違いない。だが人工的な食品づくり以前に、食料廃棄の問題とも向き合ったほうがいい
▼欧州委員会の調査によると、EU諸国では一般家庭で購入する食料品の4分の1が廃棄されている。米国では購入した食料品の40%が食べられないままごみ箱送りになる。誰しも使い切れずにしなびた野菜を捨てた経験があるだろう
▼ドイツ人ジャーナリストが書いた『さらば、食料廃棄』は、廃棄された食料品を集めて利用するゴミダイバーの活動を紹介している。食品の浪費に対する抗議活動で、余剰社会から責任ある消費への転換を提起する
▼食料自給率が40%そこそこの日本こそ、食品浪費と真剣に向き合う必要がある。食べ残し、食べ切れないほどの買い物をどう減らすか。ライフスタイルの見直しをこの夏のわが家の宿題としたい。