<金口木舌>桜の復活を目指し


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 「話が違う」。そんな言葉をことしは何度も聞いた。1月にあった名護や本部、今帰仁の桜まつり会場でのことだ。浦添市から来たカップルに感想を取材したら「なんで咲いてないの」と逆質問されて困った

▼昨年の台風被害も大きいが、名護では桜が年老いたことも原因の一つ。由来をたどれば、名物でもある名護岳の桜は1928年に地元青年団が植えたのが始まりという
▼環境によっても異なるが、寒緋桜の寿命は20~30年といわれる。長寿どころか、名護岳の桜は隠居してもいいぐらいのものがある。それならば、と市民が桜の再生へ育樹活動を始めた(14日付20面)
▼600人が来年の桜まつりで満開になることを願い、名護岳周辺の桜に肥料をやり、雑草を取り除いた。桜の時期が終わる来年2月にあらためて肥料を足すという
▼県外や他の市町村出身者と話していた時「名護市の花」はという話題になった。テッポウユリが正解だが、桜と思い込んでいる人もいた。それほどまでにシンボルとしての桜は印象が強い
▼名護の入り口に当たる、国道58号の「七曲がり」と呼ばれた場所では、テッポウユリはほぼ姿を消した。崖一面を白い花が埋める幼いころ見た景色は今も心に残る。再びまちのシンボルを失わないためには、どうしても市民の力がいる。結果が出るのは時間がかかるが、息の長い取り組みを望みたい。