<金口木舌> 諦めない


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 彗星(すいせい)のごとく現れた-とは、このことを言うのか。1日、タイで行われたWBAフライ級暫定タイトルマッチで本部町出身の江藤光喜選手(25)が判定勝ち、暫定王者となった

 ▼沖縄からの世界王者誕生は、1992年のWBAジュニアウエルター級平仲明信氏以来、21年ぶり。かつて多数の世界王者を輩出した「ボクシング王国沖縄」。その復活に向け大きな期待が膨らむ
 ▼2年前にタイの試合で敗れ、その後故障などを乗り越え世界をつかんだ。試合中、頭の中で「諦めるな」と繰り返していたという。一度も投げ出そうとせず、前へ進むことをやめなかった。この意志の強さが勝利をたぐり寄せたのだろう
 ▼WBAフライ級には正規王者がおり、日本ボクシングコミッションは、暫定王者を国内で王者として認めるかは検討するとしている。「夢は諦めなければ絶対かなう」と江藤選手。今年中に正規王者になるという目標もかなえてくれよう
 ▼所属ジム、白井・具志堅スポーツの会長は具志堅用高氏。具志堅氏は、世界王座防衛13回の日本最多記録保持者。「小さな巨人」と呼ばれ、青少年に夢を与えた偉大なボクサーだった
 ▼江藤選手の「諦めない」姿勢が素晴らしい結果をもたらした。この持ち味を最大限生かし、心技体を磨いてもらいたい。師同様に夢を届けるボクサーとして燦然(さんぜん)と輝いてほしい。