<金口木舌> 無言の叫び


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 猛暑の中、浦添市前田の高台を上ると市街地化が進む様子が一望できた。工事現場では、パワーショベルの機械音が響く。沖縄戦当時、日米両軍による死闘が繰り広げられた場所だ

 ▼終戦記念日の15日、遺骨収集ボランティア団体「ガマフヤー」の具志堅隆松さんの案内で前田を訪れた。具志堅さんは、先日日本兵と思われる全身の遺骨が見つかった場所を指し、「壕の奥深い所にいたんでしょう。このような状態で見つかるのは珍しい」と語る。亡きがらの「無念」を思った
 ▼沖縄学の第一人者で、昨年他界した外間守善さんも初年兵としてこの近くで戦った。80歳過ぎて著した『私の沖縄戦記-前田高地・60年目の証言』には、「ありったけの地獄」と呼ばれた戦闘が克明に記録されている
 ▼米兵の馬乗り攻撃に遭った洞窟内にいた外間さんは、「死と紙一重」の中を生き延びた。「沖縄の土となっていった人たちの無言の叫びが聞こえてくる」。生き残りとして歴史の真実を残したいとの使命感が伝わってくる
 ▼具志堅さんは遺骨を「家族に返したい」と願い、全ての遺骨のDNA鑑定を国に求め続けている。遺族の高齢化を考えれば残された時間は少ない
 ▼集団的自衛権の憲法解釈見直しなど、不戦の誓いとは程遠い言説がかまびすしい。「戦争は終わっていない」。無言の叫びと、しっかり向き合いたい。