<金口木舌>油売りの商い


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 「油を売る」という言葉がある。無駄話をして時間をつぶし仕事を怠ける、という意味で、決して褒め言葉ではない。だが油売りをサボりの代名詞とするのは失礼千万かもしれない

 ▼江戸時代、油売りはあんどん用の油をてんびん棒で担いで配達していた。おけに油を入れているから、注意深く歩かなければならない。客の家で油を容器に移すのもゆっくりと。その間は世間話をしながら待つ
 ▼女性に欠かせない髪の油に至っては、粘性が強いから滴(しずく)が途切れず時間がかかった。決して“ユンタク”をして怠けていたわけではない。江戸の人たちは、油は注意深く扱わなければならないと知っていた
 ▼その配慮を忘れた時、花火大会は大惨事となった。京都府福知山市の爆発事故は、露天の店主が自家発電機を動かしたまま給油しようとし、気化したガソリンに引火した疑いがある
 ▼花火大会では過去に兵庫県明石市でも事故があった。歩道橋に見物客が集中し転倒。250人余の死傷者を出した。その約半年前にも歩道橋に人が殺到する事態が発生していたため、事故の予見性が長く争われた
 ▼いずれも安全を第一に対応すれば防げたのが、何とも痛ましい。夏休み終盤。沖縄でも夏のイベントが目白押しだ。祭りの関係者は注意の上にも注意を重ねてほしい。祭りの夜はときめきと楽しい思い出だけを持ち帰りたい。