<金口木舌>「かじゃでぃふう」の響き


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 コザという地名が戦後生まれたのは、占領した米軍が「胡屋」を「コヤ」と呼び、筆記体のkoyaのyをzと誤読したからだという説がある

 ▼そんな間違いを生んだ筆記体だが、米国では書けない人が増えていると聞いた。読み間違いが多い上、ワープロが普及したため、1970年代以降、学校で教えなくなった。今や書けるのは年配者くらいで、漢字で例えるなら行書、草書のような存在だろうか
 ▼日本も同様で、平成生まれの若い世代は筆記体を読み書きできない人が多いという。2002年に学習指導要領の必修から外れ、英語の授業で教えられなくなっている
 ▼使わないと廃れていくのは世の常だ。沖縄でも昔ながらの言葉が変わりつつある。「かぎやで風」を「かじゃでぃふう」ときちんと読める人が激減したと、芸能関係者が嘆いていた
 ▼「おもろさうし」と書いて「おもろそうし」と読むように、琉球語はもともと表記と発音が異なる。「ぐすく」も「ぐしく」とうちなー読みする人は少なくなった。琉球語本来の「がじまる」も、和名の「がじゅまる」に追いやられてしまった
 ▼先人が代々受け継いできた土着の音を、私たちの時代で失うのはもったいない。市名が消えても今なお愛され続けているコザのように、「かじゃでぃふう」の響きを残していきたい。そこから、しまくとぅば復権への一歩が始まる。