<金口木舌>昆虫、食べますか


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 沖縄のお笑い芸人ベンビーさんのネタにこんなのがある。「好きな食べ物は?」「セミっ!」。一般的に食用ではないから笑いになるのだが、実際にセミを好む人は古今東西を問わずいる

▼ギリシャの哲学者アリストテレスは2400年前、羽化直前の「殻が壊れる前が一番おいしい」と書き残している。それを見て昆虫学者ファーブルは自らセミを料理した(内山昭一著『昆虫食入門』)。ナッツと似た味覚が魅力のようだ
▼国連が食糧不足を解消するため、昆虫食を推奨している。現在、人類の7人に1人、10億人が飢餓状態とされる。2050年に人口は90億人に膨らむ予測なので安くて栄養価が高い昆虫に白羽の矢が立った
▼タンパク、脂肪、ミネラルが豊富な昆虫は、世界で20億人が1900種を食している。バッタ、クモ、ハチのほかゴキブリまで味わう文化もあるらしい。まさに「蓼(たで)食う虫も好き好き」だ
▼普及の最大の壁は人々の嫌悪感と抵抗感だろう。人間は「脳で食べる動物」のため、見た目で食わず嫌いになりがちだ。一度美味を知れば、と愛好家は力説する
▼だが、その前に克服すべき問題もある。日本では年間約2千万トンもの食品が廃棄されている。同じ星に飽食と飢餓が同居する矛盾。足元の食べ残しにも目を向けないと“食の南北問題”は解決しない。一人一人が虫のいい考えをしていては地球は持たない。