<金口木舌>沖縄の親たちの宿題


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 クラスで“だっこ”の宿題を与えられたモグは恥ずかしがりながらも家路を急ぐ。赤ちゃんが生まれてから母親にかまってもらえない日々。その日は家族全員にだっこしてもらった。翌朝、教室は笑顔であふれる

 ▼子と家族の密な関わりの大切さを描いた絵本「しゅくだい」(岩崎書店)の場面だ。夏休みは終わったが宿題を残し、親に泣きつく子もいるだろう。親の多くはたぶんこう返す。「自分でやりなさい!」
 ▼渋々徹夜して仕上げ、目を腫らした経験を思い出す。だがその宿題の絵を親が応接間に飾った時は照れくさかったが、うれしかった。モグの喜びは分かる気がする
 ▼全国学力テストで沖縄は小中学校6教科でまた最下位だった。関係者は家庭教育の弱さや夜型社会を要因に挙げる。学習状況調査では県内の子は家族や地域との関わりが薄いとの結果が出た。沖縄社会の根本的問題が横たわる
 ▼それは非行問題とも通底する。県内のある女性(30)は自身の「不良少女時代」を振り返り「親にかまってもらいたくてどんな悪さでもした」と語った。低学力は結果的には、親や地域との密な関わりを求める子どもからの赤信号と言えないか
 ▼まずは子と向き合う時間をつくる-。それが今、沖縄社会に課された宿題に思えてならない。密に関わり子どものやる気を引き出す親や地域の役割が問われている。