<金口木舌>「倍返し」に歯止めを


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 日曜夜のテレビドラマ「半沢直樹」が話題を呼んでいる。視聴率も30%と驚異的だ。主人公の銀行員が上司の不正に「やられたらやり返す。倍返しだ」と決然と立ち向かう姿が受けている。決着のつけ方は勧善懲悪の“サラリーマン時代劇”とも評される

▼こちらも勧善懲悪を気取っているのだろうか。「世界の警察」を自任する米国だ。オバマ大統領はシリア攻撃をにらみ、議会の承認を得る働き掛けを強めている
▼地上軍を派遣せず短期間で攻撃を終えると言うが、アサド大統領は「地域戦争になる危険がある」と応戦の構えだ。限定的介入どころか、報復の連鎖を招き泥沼化する恐れがある
▼既に難民は200万人に達し、半数が子どもだ。武力行使に踏み切れば、市民を巻き添えにして犠牲者をさらに増やすだけだ。中東にまた火種が増える
▼シリアの先住民アムル人がバビロニアでつくったハンムラビ法典は「目には目を、歯には歯を」で知られる。一般に「やられたらやり返せ」と半沢直樹ばりに報復を勧めていると誤解されるが、本来は過剰な仕返しを禁じて同等の懲罰にとどめ、報復の激化を防ぐのが主眼だという。罪刑法定主義のはしりだ
▼紀元前の法典とは違い、国際協調が進む現代では、報復に歯止めをかけるのは外交努力しかない。国際社会は負の倍返しではなく、知恵の倍返しを考えるべきだ。